ミーハー映画編青山真治監督、故郷に錦を飾るの巻@北九州・門司港(2000.7.27) 青山真治監督、今年のカンヌ映画祭で最新作『EUREKA(ユリイカ)』が国際映画批評家連盟賞&世界キリスト教賞グランプリ、(←すいません、私はこれは知りませんでした!!)ダブル受賞記念ということで、出身地の北九州・門司港にてイベントがありました。
青山真治 DIRECTOR'S DIRECTION 〜Talk&Film〜
日時 H12.7.27(木)・場所 北九州市 門司港ホテル2Fスパーツィオ
17:00〜『Helpless』上映 (1回目)
18:30〜 青山真治監督トークショー
19:30〜『Helpless』上映 (2回目)
21:00〜 アフタービアパーティー
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以上のようなタイム・スケジュール。私は第一回目の上映と、トークショーに参加しました。久々の門司港は、なんか、ちょっと前の「ベイサイドプレイス博多」化していて、ううーむとうなってしまった私。素材で勝負の以前の門司港で十分だったのにな....なんか厚化粧になっちゃったなーという感じ。 さて。『Helpless』は、私はWOWOWで放送されたときに見たのですが、やはりスクリーンで見れたことがうれしかった。冒頭の空撮とかね。しかし私が見た回は、ちょっとしたトラブルで(フィルム自体が古くて傷んでいる為とのこと)その空撮のシーンが、ちょっと音声が出てなくて悲しかった....。映画は最初に観たときには、私も暴力シーンとかに、げげっ!!とひるんだのですが、今回、二度目をスクリーンで見たら、結構、音で表現している部分も多々あったのね。あと最後のファミレスは到津のフォルクスだったのか!!とか、映画の中のTVドラマに出ていた長髪の男性は青山監督自身だったのか!!とか、こんなのは本日の発見でしたね。あとTVの小さい画面ではわかりづらかったシーンが、スクリーンで見ると「ああ!!」と思う部分がたくさんあり、まぁー私にとっては今日初めて観たも同然という感じになってしまったなー、感覚的には。
さて。トークショーは、主催の女性が司会。かと思いきや、なぜか急きょ、予定にはなかった(と、司会の方も冒頭で言っていた。何なんだ?!呼んでなかったのに来ちゃったとか?!)友成純一氏(福岡市在住のホラー小説家。ときどき映画評を西日本新聞とかに書かれている。)までもが舞台に登場。この方、司会の人は「映画評論家の.....」て紹介したけど、小説家だよ確か.....と思っていたら、本人がムッとした感じで自ら訂正してましたね。「さきほど映画評論家と紹介されましたが、私の本業は小説家です。」て。そうそう、この人、以前、私、業務試写でよくお会いしてましたが、一回、大遅刻してましたね。あんなに遅刻して、あの映画の評、どこかに書いてたら怒るで、ほんま。しかし、なぜ急きょ参加?!ハッキリ言って、この日のメインは青山監督なのだから、こんな、自分のこと主張する人を舞台に上げなくてもイイのになぁーと思いましたね私は。特に進行に力を貸したって感じでもなかったしなー。あの女性だけで十分こなせたと思う。監督の意向としては、「質疑応答に、より多く時間を割いて下さい」とのことだったらしいけど、最後の方で監督が一番ノッて熱弁ふるっているのを遮って「監督、お時間があまりないので、最後の質問をここで」って言っちゃうのは何だかなーと思いました。多分、監督、ムッときてたと思う。その証拠に、質問受けた後に「そんな質問がホントに最後の質問でイイんですか?」って言ってたし、その後、「最後に締めの一言を」って促されたとき「さっきの続きですけど」って話し出したもの。やはり、それが監督にとって一番「本日の言いたいこと」だったんだよー。なんだか.....段取り悪し、でしたね。上映での映写トラブルとかのせいもあったんだろうけど、私は友成氏が自分の小説のこととかしゃべってたのが「時間が押した」一因だと思うぞー。メインの有名人は一人でいいです。こういうときは。
質疑応答の中身は、私もメモをとりながら聞いていた訳ではないので、覚えている限りを書くと.....
Q:映画『Helpless』の、あの、ヤな感じの同級生は非常に印象的でしたが、誰かモデルがいるんですか?
A:あれは僕自身、僕の一部分です。(キャラクターとしての)彼は、新作『EUREKA』にも出てきます。2/3くらい。かなりの割合で。外国人には、結構ウケていたようでした。
Q:九州弁を使われるのは、どんな意図が?雑誌等のインタビューでは「九州弁にはリズムがあるから」というようなことを、おっしゃってますが。
A:そんな、ここにいる人たち.....九州弁を使っている人がほとんどだと思いますけど、こんなところでそんなこと言っても、ウソだとわかるでしょう?!(笑)それはまぁ、要するに「俺が好きで、イイと思っているから使っとるんだ」というだけの話で、それを東京の人向けに説明しているといったところですね。
Q::映画『Helpless』で、インター(インターナショナル)が使われていたのは、どういう意図が?
A:あれは、父親の世代の労働者の人たちなら、ほとんどの人たちが口ずさめると思うんですよね。で、映画の中でもそうでしたけど、父親は正確にメロディーを口ずさんでいるけれども、息子は正確なメロディーは口ずさめない。口ずさめないけれども、父親のことを思うとき、ふと口ずさむというか。世代を越えて受け継がれるものの象徴ということで使いました。
Q:『EUREKA』を観る前から、こんな質問も何ですが、次の作品の準備はあるのですか?構想とかがあれば教えて下さい。
A:それは、僕は言わないことにしています。口にすると撮れなくなるような気がするというか、これは自分のジンクスなんですが、あの時ああ言っていたから撮れなかったのかーとか、あとになって言われたりするのも嫌なので。だから、今日も言いません。
Q:今、若手の俳優で使いたい人は?
A:女優は知らないからなぁ.....。男性では、永瀬正敏、浅野忠信、武田真治とか.....あと最近TVドラマ『池袋ウエストゲートパーク』に出ていた窪塚洋介くん、彼はいいですね。
Q:監督の好きな俳優さんは?
A:洋画邦画問わずですか?えーと男優はクリント・イーストウッドだな。ですね。(と、これは即答。)女優は、ううーん、今、若尾文子が浮かんだので。60年代の大映の作品に出ていた頃の若尾文子。
Q:主演俳優は、どのようにして決められるのですか?
A:主演俳優は、プロデューサーが決めます。僕が決めたのは『Helpless』の浅野君と『EUREKA』の役所広司さんくらいです。
Q:監督をやっていないときは何で食っているんですか?
A:僕は映画監督だから、映画監督以外のバイトなんてしたくないから、他のことはやりません。だいたい年に2本ペースで撮れば、まぁなんとか生活出来るので.....よく「すごいペースで映画撮ってますよね。どうしてですか?」って聞かれますが、そりゃ生活するためだよ(笑)。(ここで司会者から、「監督は映画の批評とかで本とかも出されていますよね?最近も『ロスト・イン・アメリカ』という本を共著で出されましたよね。ああいうお仕事は、また、別ですか?」と指摘されて)ああー、あれは、まぁ、別ですね。おこずかいみたいなものです。(司会の女性から、「この本を宣伝がてら紹介して下さい」と促されて)いやー、この本はですね......難しいんですよ。80年代のアメリカ映画について、あれこれ好きなことを語っているのですが、ちょっともう、かなりの本数の映画を観ていないと、ついてこれないというか。だから、一般の方々には、あまりお勧めできないなぁー。(蛇足/しかし、私の知人には、この本、かなりウケていた模様でした。まぁー、マニアックな知人ですからね。かなり。)
A:カンヌで受賞されましたが、受賞作品が必ずしも興行的には成功するとは限らないことに関して、どう思われますか?(←なんか、これって相当失礼な質問では?!と私は思った。)それと、邦画だからということで観ない人々に一言。
Q:映画を観る人は、邦画でもヨーロッパ映画でもどこの国の映画だろうと観るんですよ。観ない人は観ない。今、やっぱりハリウッド映画が断然、宣伝は派手だから、どうしたって人は派手な宣伝の方に動く訳で、それはもう、かなわないと最初から白旗あげてます。でも、だからといって別に手を抜いて映画を作っている訳ではないし、まぁ、状況は確かによくはないんだけど、そんな中でも地道に映画を撮っていって、また、受賞出来るようなクオリティの高い作品を作っていくよう努力するという、それだけです。
Q:久しぶりに門司港に帰ってこられての印象はどうですか?それと、故郷をフィルムに写して世界に発信することについての意義を、お聞かせ下さい。
A:それは、僕にとってはどちらも同じ事なので、ひとつで答えます。まずは久々に帰ってきて「変わったなぁー」という印象です。もうすでに『Helpless』に撮った建物とかで今はない所もあります。その場所を車で走ることも出来ないのです。僕は後ろ向きな人間なので(笑)、残しておくべきものは残しておかなくてはいけないのではないか、八幡の高炉だけが文化遺産じゃないだろ、門司の機関庫とか(←これは門司の鉄道の車庫のこと?!ちょっと私には、よくわからなかったですが)、サッポロビールのレンガ造りの工場とか、あんなカッチョイイものをどうして壊すの?!と思います。故郷でロケするときは、もちろん好きな場所を写している訳ですが、もっと、いろんなところを、あそこも、ここも、『Helpless』や『EUREKA』のときに撮っておくべきだったと今は悔やんでいます。
Q:ヴィム・ベンダースのことについて書かれていましたが、ヴィム・ベンダースのようなロード・ムービーを作られたりは、しないのですか?それと、黒沢清監督の元で働かれていて学んだこととは?
A:ほんとに、これが最後の質問でいいの?新作『EUREKA』が、ロート・ムービーです。黒沢清監督から学んだことは、映画を撮るためのノウハウの全てです。
Q:最後に、締めの一言を何か。
A:さっきの続きですが、残しておくべきものは残しておかなくてはいけないのではないか、ということ。
まぁ、記憶での文なので、細かいところは間違っているかもしれませんが、小1時間のトークショーはこんな感じでした。
私の友達は、今年の3月ごろに福岡市であった映画のイベントで、青山監督と話す機会があったらしいのですが、それは今思えば大ラッキーだったのかも。カンヌで受賞した今は、もう天上の人という感じでした。いやいや、監督自身は多分、気さくな人なんでしょうけど、スタッフ側のガードが、とっても固かった。とても接近遭遇は出来ませんでした。残念です。私は家の都合でビアパーティー出席出来なかったし。しかし、見たところ、どうもお役所関係のエライさんとかも多数来ていた様子だったし、パーティーに出たところで、やはり監督には近づけなかったような気がします。残念。
(2000.7.27)
追 記
実は私は、なんとか監督のサインをもらえないかと、『Helpless』のパンフ(というか書籍)を持参していたのですが、当日はそれはかなわなかったのでした。しかし、巡り巡って、司会者の女性が、私が以前発行していた映画のフリーペーパー「ミーハー通信」を読んでくださっていて、ラッキーにも、その方経由で監督のサインをいただけたのでした。ウレシイ!!(そして、その「後日」というのは、このトークショーの翌日だったのだけど、私は小倉魚町で、青山監督とすれ違ったのでした。) 更に後日。天神地下街でバッタリ再会した、私の門司の高校時代の同級生。なんと、青山監督とは家が近くで、家族ぐるみで知り合いだったというじゃないですか。お兄さんと同級生だったとのこと。私も1年間だで、門司に住んでいたから、じゃあ実は近所だったってことか?!世間は狭い。その友達は、映画『チンピラ』をビデオで見たこともあるくせに、それが(自分の知っている)青山監督の作品とは全然気づかなかったらしいです(爆)。おいおい!!カンヌ映画祭で受賞して、一気にメディアでとりあげられて初めて「えっ?!これって青山さんとこの坊ちゃん?!」と近所の方々は気づいたそうです。そんなモンなのねー。映画に疎い人にとっては。 |