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Liveレポ

佐野元春 THE HOBO KING BAND with their Friends

ROCK&SOUL REVIEW @渋谷公会堂 2001.7.1(Sun)  

 いくら好きなミュージシャンとはいえ、自分が住む町にもツアーでやってくるとわかっていながら東京まで追っかけて観たのは初めて。あっ、大昔、大江千里のファンだった頃、ツアー初日が彼の出身地・神戸だったときに追っかけて見に行ったことがあったっけ。それ以来だ。
 そして、その上、なんと1F6列目中央という席!! こんな席、長年ファンだけど初めて。いやがおうにも始まる前からボルテージがあがるってもんだ。

 今回は、ドラマーが小田原さんから古田たかしさんにチェンジ、というか古田さんは前バンド「ハートビート」のときのドラマーだったから、元に戻ったというべきか?! それにしても、ドラムが変わるとバンド全体の音がこうも変わるのかという驚き。パンフレットでKYONさんが「ひとりでもメンバーが変われば、そのバンドも変わる。」って語っているけど、まさに。もちろん小田原さんのドラムも上手かったんだけど、古田さんの、あのニコニコ笑いながら歌いながら叩くドラムは、すごくスコーンと突き抜けたような明るい音。だいたい、あんなにニコニコしながらドラム叩くドラマーを、私は他に見たことない。そして、山本拓夫さんという方の、サックス&フルートの参加。アレンジ次第で、ROCKに、あんな風にフルートが溶け込むというのは、すごく不思議な初体験だった。そして以前コーラスで参加していたメロディー・セクストンさんの復活。彼女は黒人のビック・ファット・ママという感じで、私はついアレサ・フランクリンを連想してしまうのだけど、この日は、後ほどアッと驚く「隠し球」が登場したのだ。まぁ、そんな訳で「いい感じにグレードアップしたホーボーキング・バンド」というのが第一印象だった。

 さて。開演予定時刻より若干遅れて、幕が上がった。マイクスタンドのところだけ四角いラグマットが敷いてある。そしてステージ中央の頭上には、羽が付いたでっかい王冠のオブジェ。かっこいーい!! そして、なんといっても「ああー、ステージが近い!!」という印象。なんたって、オペラグラスなしで、佐野元春がつま先までしっかり見えるのだ。KYONさんのほくろだって、しっかり見える近さだ。きゃー!!
 1曲目は『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、そして2曲目は『ハートビート』レゲエ・アレンジ。順番で覚えているのは、なんとここまで。ああ、情けない。(始まる前に、一緒に行く友達と「いつ頃から佐野元春のファン?!」という話をしていたとき、「アルバム『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』が最初」と話していたので、なんか、この1曲目は、おおーっ!! と思ったのだった。)とにかく私は佐野元春のコンサートに行くと、1,2曲は絶対ものすごく切なくなって号泣するのだけど、今回はそれがなくて、とにかく全編ハッピーな気分だった。いつも泣いてしまう『ハートビート』がバラードではなくてレゲエのアレンジに変わっていたというのもあるし、あの『SOMEDAY』が登場しなかったというのもあるのかも。(これにはファンは賛否両論だったみたい。でも渋谷公会堂2日目では、やったらしい。)全体的に、意外な選曲が多かったような気がする。しばらくステージでやらなかったような、長年のファンの通好みな選曲というか.......。きっと前回のデビュー20周年記念のツアーが、ファン・サービスという感じで、誰もが知っている懐かしい名曲のオンパレードだったから、「そこからは、もうワンステップ先に踏み出したんだぜ」という佐野元春の意思表示だと私は思ったんだけど。Webでの感想を読むと、戸惑っているファンや、けなしているファンも(驚くことに)多い。もちろん絶賛しているファンも多いけど。私は、常に変化して前進していく佐野さんにはエールを送りたいと思う。本当にポジティブですごい人だと思う。元々今回のツアーは、新しいアルバムをひっさげてのツアーではないので、出てくる曲がまるで予測がつかなかったんだけど、私にとっては、どれも嬉しい驚きだった。発売前の新しい曲を2曲も披露してくれたし(1曲は先頃Webで期間限定公開された『Sail On』、そしてもう1曲は『ジグゾー』という歌)、アンコールで、やっとやってくれた『アンジェリーナ』も、そして最後の最後に、私の大好きな『So Young』でしめてくれたことも。もう、ほぼ全編、佐野さんと一緒になって大合唱という感じだった。多分、会場全体が。途中でふと振り返ると、2階席も全員総立ちだった。
 そうそう、特筆すべきは、先に書いたメロディーさんの隠し球。『Wild Hearts』の中で「ラジオから流れるR&B」の歌詞の後に、オールディーズ・ナンバーが登場するのがお約束なんだけど、今回は、なんと、ここで映画『ブルースブラザース2000』の中でアレサ・フランクリンが歌っていたナンバー『リスペクト』を、メロディーさんが朗々と迫力の歌声で歌い出したのです!! 映画『ブルースブラザース2000』は、劇場公開自体は2年前なんだけど、今年の春先にDVDが発売されたし、なんたって私は4月に生のブルースブラザースバンドを観たこともあって、最近、何度もこの映画のDVDを観ていたので、(そして特にアレサ登場のこのシーンが大好きなので)私の中では、今まさに「旬の歌」だったのです。それがふいにこの日のLiveで登場したので、もう「うそーっ!! 嬉しすぎっ!!」と叫んでしまいました。ほんとうにメロディーさん私のために、ありがとう!! っていうくらいでした。そして、この間、元春がドラムを叩いているのでした!! うわー、この人、ドラムも叩けたのか?! びっくり。なんて器用なんだー。
 古い曲で佐野さんの声が出ないためかキーを下げてある曲も数曲あったけど、これまたWeb上では「そんなにしてまで歌ってほしくない。潔くない。」という意見もあったりで、ふぅーむ......という感じ。私にしてみれば、ノドを大事にして長く歌って欲しいから、聴きたい曲はキーを下げてでも歌ってもらえたほうが嬉しいんだけど。まぁ、ファンの欲望なんてきりがないし、勝手なものだからなぁ。

 とにかく。私はこの日、すごくハッピーでした。元々、佐野さんファンということがきっかけで(と思っている)ネットを通じて遠く離れた所に住む人と知り合って、別のコンサートにも一度ご一緒したけど、ずっと「佐野元春のLive、いつか一緒に行けたらいいなぁ。でも日程とか、なかなか合わないよね。」って思っていたから。それが、まず全国数カ所の限定Liveというツアー日程が発表になった時点で、東京公演2DAYSのうち一日が日曜日(勤め人でも確実に行ける)に決まったときから「やった!! チャンス!!」と思ったんだけど。東京でのLiveチケット争奪戦が、こうもすさまじいものだとは予測していなかったというくらい難航してしまって「でも絶対行けるハズ、だって私はこんなに行きたい気持ちでいるんだから」と思っていたら、なんと、思わぬところから、全然見知らぬ人がネット経由で「急きょ行けなくなったから」って定価でチケット譲ってくれて。しかも、それが1階6列目!! もう、こんな偶然は奇跡だと思ったんです、マジで。こんなハッピーとラッキーが重なるなんて、と。私は普段は無神論者だけど「神様ありがとう!!」とさえ思ってしまった。
 でも。たぶん、こんなことはもう二度とない。奇跡は最初で最後の一度きりだから「奇跡」なんだもんね。もう、これ以上のハッピーは望んじゃいけないね、と。だから、ありがとう。サヨウナラ。
 と、最後はワケわかんない超個人的なことで、すいません。
 
 とか言いながらも、これを書いている時点では明日が同ツアーの福岡公演。それを観たら、また「これがベストの佐野元春だ!!」なんて言っている私かもしれません。